中学校のプログラミング授業で何を学ぶのか知りたい方へ
または、中学校の学習指導要領を知りたい方へ
文部科学省のプログラミング教育の手引きにそって、現役のシステムエンジニアの視点で中学校のプログラミング授業に関する情報をわかりやすく説明します。
目次
1.中学校プログラミングの必修化はいつから?
小学校では、2020年からプログラミングが必修化されました。
中学校では、1年遅い2021年から技術・家庭科の科目内のプログラミングに関する内容を充実させます。
さらに、高校では、共通必履修科目としてプログラミングを含む「情報Ⅰ」を新設(2022年度)し、全ての生徒がプログラミングのほか、ネットワーク(情報セキュリティを含む)やデータベースの基礎等について学習します。
プログラミングがいよいよ英語と同じように全ての児童、生徒に共通の科目となります。早ければ2024年の大学入試試験にも追加されます。今までプログラミングが苦手だなと思っていた生徒は真剣に得意科目にするべきか考えなくてはなりません。
2.中学校の授業科目
中学校でも小学校同様にプログラマーの育成を目標としているのではありません。
「技術」の授業で学ぶ他の内容と同じく、体験を通して現代社会で使われている技術に対する理解を深め、興味を持つことが目的です。
中学校では小学校に引き続き論理的な思考力が重視されていますが、より技術的な面にも重きを置き、コンピュータを用いた活動が強く求められているようです。
中学校においては、技術・家庭科(技術分野)においてプログラミング、情報セキュリティに関する内容を充実させています。
また、【技術・家庭科(技術分野)】では、「計測・制御のプログラミング」に加え、「ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミング」等について学ぶと記されています。
【 中学校学習指導要領(2017年告示) 】
(2)生活や社会における問題を,ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミングによって解決する活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 情報通信ネットワークの構成と,情報を利用するための基本的な仕組みを理解し,安全・適切なプログラムの制作,動作の確認及びデバッグ等ができること。
イ 問題を見いだして課題を設定し,使用するメディアを複合する方法とその効果的な利用方法等を構想して情報処理の手順を具体化するとともに,制作の過程や結果の評価,改善及び修正について考えること。
(3)生活や社会における問題を,計測・制御のプログラミングによって解決する活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 計測・制御システムの仕組みを理解し,安全・適切なプログラムの制作,動作の確認及びデバッグ等ができること。
イ 問題を見いだして課題を設定し,入出力されるデータの流れを元に計測・制御システムを構想して情報処理の手順を具体化するとともに,制作の過程や結果の評価,改善及び修正について考えること。
新学習指導要領ではプログラミングに関する記述が増え、プログラムの制作に加えて動作の確認や動作が正しく動作するか検証、結果が正しいかの評価、誤りがあれば改善と修正まで行うことが求められています。
さらにプログラミングを学ぶ目的に「生活や社会における問題を計測・制御のプログラミングによって解決する活動を通して解決する」ことも追加されています。
また双方向性のあるコンテンツという文言が加わったことも特徴的です。
双方向性という言葉は難しいですが、コンピュータへインプットを与えて、アウトプットを得られる確認するという意味です。
現行の学習指導要領にあるように、ソフトウェアの仕組みを知って使うだけでは「受け身」な活用にとどまります。
コンピュータの使用者である自分がコンピュータに働きかけをしてその応答を得る、コンピュータと自分との双方向のやり取りが重要だと考えられています。
3.すでに中学校でのプログラミングは始まっている!?
実は、中学校でのプログラミング教育については現行の学習指導要領にも記載があります。
現在の中学校では2012年から技術・家庭科の技術分野でプログラミング教育が行われています。
技術分野は、さらに以下の4分野にわかれています。
(A)材料と加工の技術
(B)生物育成の技術
(C)エネルギー変換の技術
(D)情報の技術
これらのうち、「(D)情報の技術 」の中にある「プログラムによる計測・制御」の項目がプログラミングに関する必修科目としてすでに実施されています。
4.2021年度から「全面実施」
中学校のプログラミング教育の拡充においては、現在の中学校1年生(2020年4月に中学入学)は、小学校のプログラミング教育を受けていない学年になります。
彼らのプログラミング教育はどのように行われるのでしょうか。
新学習指導要領は、中学校では2021年度から「全面実施」となります。
「全面実施」は「2021年度に中2、中3の子ども達は、新しい学習指導要領で学んでおかなければならない」という意味になります。
5.保護者が準備するものはある?
プログラミング教育にともなって保護者が用意するものはいっさいありません。必要なものは全て学校が用意しますので安心してください。
6.なぜプログラミング教育が必修化されたの?
今日、コンピュータは人々の生活の様々な場面で活用されています。
家電や自動車をはじめ身近なものの多くにもコンピュータが内蔵され、人々の生活を便利で豊かなものにしています。
誰にとっても、学校での学習や生涯学習、家庭生活や余暇生活など、あらゆる活動において、コンピュータなどの情報機器やサービスとそれによってもたらされる情報とを適切に選択・活用して問題を解決していくことが不可欠な社会が到来しつつあります。
コンピュータをより適切、効果的に活用していくためには、その仕組みを知ることが重要です。
コンピュータは人が命令を与えることによって動作します。
端的に言えば、この命令が「プログラム」であり、命令を与えることが「プログラミング」です。
プログラミングによって、コンピュータに自分が求める動作をさせることができるとともに、コンピュータの仕組みの一端をうかがい知ることができるので、コンピュータが「魔法の箱」ではなくなり、より主体的に活用することにつながります。
プログラミング教育は子供たちの可能性を広げることにもつながります。
プログラミングの能力を開花させ、創造力を発揮して、起業する若者や特許
を取得する子供も現れています。子供が秘めている可能性を発掘し、将来の
社会で活躍できるきっかけとなることも期待できるのです。
このように、コンピュータを理解し上手に活用していく力を身に付けることは、
あらゆる活動においてコンピュータ等を活用することが求められるこれからの社会を生きていく子供たちにとって、将来どのような職業に就くとしても、極めて重要なこととなっています。
諸外国においても、初等教育の段階からプログラミング教育を導入する動きが見られます。
こうしたことから、このたびの学習指導要領改訂において、小・中・高等学校を通じてプログラミング教育を充実することとし、2020 年度から小学校においてもプログラミング教育を導入することとなりました
7.プログラミング教育の必修化の目的
文部科学省の小学校プログラミング教育の手引きに記載された目的は3つあります。
①「プログラミング的思考」を育む
②プログラムの働きやよさ、情報社会がコンピュータをはじめとする情報技術によって支えられていることなどに気付く
③各教科等の内容を指導する中で実施する場合には、教科等での学びをより確実なものとする
「プログラミング的思考」とは、
自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組み合わせが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組み合わせをどのように改善していけば、より意図した活動につかづくのか、といったことを論理的に考えていく力のことです
学習指導要領にはプログラミング言語を使ってプログラマーを養成するとは記載されていません。
あくまで情報社会の理解とプログラミング的思考(論理的思考)を身につけることが目的となっています。
8.なんとプログラミング教育が大学入試に!
政府は2018年5月17日に開いた未来投資会議で、2024年の大学入試試験にもプログラミングなどの情報科目を導入する方針を確認しました。
未来投資会議の議長を務める当時の安倍首相は、「AIやビッグデータなどのIT、情報処理の素養はこれからの時代の『読み書きそろばん』」だと述べています
これは、文理系問わずに情報教育の基礎を習得させることで「第4次産業革命」の牽引役となる国内のAI人材の底上げを狙うものです。
9.プログラミングは子供の将来の準備
プログラミング的思考を身につけることで、論理的に物事を組み立てることができるようになるだけでなく、物事の本質を捉えることができるようになるので、
社会に出た時に素晴らしい武器になる。
10.中学校からプログラミング学習をするにはプログラミング教室がおすすめ
中学生がプログラミング学習をするには、家庭でプログラミング学習ツールを利用して学ぶか、プログラミング教室に通うかのいずれかの方法が考えられます。
家庭教育はコストが抑えられますし、子供が自分のペースで学習を進められるメリットがあります。最近は、オンラインで学べるツールも充実しています。
しかし、興味関心やスキルに合うツールが見つからなかったり、教えてくれる人が身近にいなくて長続きしなかったりする場合もあるでしょう。
プログラミング教師に通えば、スキルや興味に合わせて効果的な学習を行うことができます。
また、さまざまなツールの中から自分のレベルややりたいことにあったものを選ぶことができます。スケジュールや費用の都合がつけば、プログラミング教室に通われることをおすすめします。